THE IKKYO TSUSHIN

うろうろすること- 春号巻頭メッセージ -

入学おめでとう。一橋通信から新入生のみんなに、一つだけ贈りたい言葉がある。「うろうろ」だ。あてもなくあちこち歩き回るさま、どうしたらよいかわからずに困りはてているさまを表す副詞だ。この言葉を贈ろう。

別の表現はいくつかある。まごまごでもくねくねでも、迷走でもモラトリアムでも、なんでも良い。けれどこの中で一番諸君の視点に立っている表現で、諸君がこれから体験する実感や行為を表すのにぴったりな言葉は、「うろうろする」なんだと思う。

合格発表からそのうろうろは始まる。○○○○○のイカツイおにーちゃんに囲まれたり、○○○部や○○○○部のちょっとケバめでキレーなお姐さんに声かけられたりして、有頂天になったり、うぜーと思ったりするところから。

新入生というのは新歓期をチョー楽しく過ごせる人と、 passed blue とでも言おうか、せっかく合格したのになんか乗り切れないで過ごす人とに二分される。うろうろは後者のことか、と思うかもしれないけれどそうじゃない。新歓期を楽しく過ごせる人だっておそらく、「入学試験の時には全く予期、意図していなかった行動を数多くしている」という意味では、やはりうろうろしているんだ。新歓期にブルーになる人たちというのは、せっかく知性あふれる人達と共に勉強しようと思ったのに、知性のかけらも感じられない先輩達、やる気も存在感もないクラス担任、何を言っていて、どういう学問なのか全然伝わってこない講義や教官に失望していく。全ての期待を裏切られ、まさに意図していなかった状況に戸惑い、周りの浮かれた雰囲気についていけなくなる。1年かそれ以上のあいだ入学したいという意図を持って勉強したというのに、皮肉にもその入学後の1ヶ月のほとんどが、どのような新入生にとっても意図せざることだらけだ。

さあ、うろうろは始まった。新歓期だけだと思うなかれ。これは2年、3年、4年、そして卒業後も続く非常に長い迷走の、ほんの幕開けに過ぎないのだ。うろうろが悪いわけではない。ただ定められたレールが終わり、坂も分岐もない新幹線だった旅が、ナビも地図もない自家用車で自分の家を探しに行く道のりに変わっただけのことなのだ。大人として歩み出すというのはそういうことだ。

うろうろはするものだ。でも、私が自分の学生生活を振り返ってみると、その当時の自分にとっては望ましい行動であったとしても、随分と無駄なうろうろをしてきたような気もする。経験しなければ無駄だとわからない、無駄だとわかったことがその無駄の価値だ、というような場合もある。一方で、ただもう少し早く知っていれば済んだこと、もう少し早く気づけば必要なかったことも多かった。

無駄にうろうろしなきゃいけない原因としては、いくつかの問題が挙げられる。大きく分ければ新入生自身がなんとかしなければならない問題と、大学や社会といった周りの環境を変えていかなければならない問題があるだろう。

新入生は、自分で自分のやることを決めていく、ということを自覚しないといけない。このことが本当に実感として感じるようになるまでには、ちょっと時間がかかるかもしれない。色々な人に影響され衝動的に素晴らしいものに出会って感動することもあれば、なんて影響されやすいのだろうと、自己嫌悪に陥ることもあるだろう。そうやって、うまく行くこともあれば時にはつまずいてしまうような不安だらけの道のりを、必死になって自分の家を探しながら進んでゆく。結局はそういう年頃なんだと思う。

一方で、大学や社会ももっと改善していかなければならない点が多い。例えば、この大学のカリキュラムがあまりうまいようには組まれていないということが挙げられる。何をやったらいいのか解らないからうろうろしているのに、発展科目を急に取ることができてしまったり、導入科目とは名ばかりで、発展科目とのつながりがなんら明らかでない講義もある。そのようなクセを知っているのと知っていないのとでは、講義の選択の仕方は大きく違ってくる。また、本当にやりたいことを見つけた人でも、大学のカリキュラムではそれを学べないことが解り、そこから新たなうろうろがスタートすることもある。一橋のおかれている環境もある。人数は少なく、都心から離れている。学外とのつながりや、情報の交換に乏しい。外に頼らなくてもやっていけるだけの優秀な人材がそろっているともいえるけれど、一方でやはり損もしている。

以上の、いろんなうろうろの話を踏まえて、若干「一橋通信」のスタンスについてもお話ししておきたい。どんな記事でも面白ければ勝手気ままに載せられる雑誌なんだけれども、いくつかの方向性はある。

独立して、自分たちの手で創っていく団体であること

自分たちで考え、自分たちで決めて、自分たちで企業と協力関係を築いて、部室を借り、大学や関連団体の力を借りず、独立した団体であること。お金がらみで自治会や生協の批判ができないようなメディアにはならないよ、という立ち位置。 ( とはいえ、まだ批判とかはしてないんですけど。 )

一橋生と一橋生、学内生と学外生、学生と企業、学生と OB の繋がりを作っていくこと

世の中にはいろんな活動をしている人たちがいる。サークルでもビジネスコンテストでも、そういう場がいろいろあることを知っている、ということは知らないよりはマシだと思う。そこで何が得られるかは私たちには解らないけれど、そういう道もあるということを紹介し、さらに行動に結びつくようなイベントなども開催していく。

一橋のアイデンティティを確立していくこと

キャプテンズ・オブ・インダストリーなどという言葉を持ってこなくとも、一橋は「企業人になるための学校」だという色をもっと強く認識して欲しい、と願っている。大学が「社会科学の総合大学」を目指すと言うのは、それでは何も決めていないも同然だと思う。小さい大学であるだけにもっとまとまっていかなければ、他の多くの大学と同じような代わり映えのしない大学になって、どんどんつまらなくなっていく。だから、そうならないよう、記事にしても団体の運営にしても、ビジネスの匂いがするようには心がけている。

この雑誌は、一橋通信は大学生活の攻略法にはなれない。でも、価値あるうろうろに近づけるためのささやかなガイドブックになれたら、この上なく嬉しく思う。

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Last Updated: 2009-06-25T03:52:44+09:00 (Thu)